産地だより

京都ポルタ店限定、京都を味わうスープができました。

スープストックトーキョーでは、2019年7月1日からの1か月間、京都ポルタ店限定で「京湯葉の冷たい澄ましスープ」をご用意することになりました。「トーキョー」という地名を冠する私たちが、京都に初出店してから7年。このスープが生まれた背景には、ひとりの店長の並々ならぬ熱意と、「京の台所」と呼ばれる錦市場で重宝されてきた、とある湯葉屋さんとの出会いがありました。


スープストックトーキョー京都ポルタ店は、京都駅に直結した地下街の一角にお店を構えています。京都ポルタ店の店長に着任して1年半になる日髙は、以前からどこかもやもやとした気持ちを抱えていました。

日髙「京都という場所にある“スープストックトーキョー”。私たちのブランドには“トーキョー”がついています。私自身は福岡県出身なのですが、このお店のスタッフのほとんどは、京都生まれ・京都育ちなんですよね。この土地へ着任してみて日々感じることは、『京都』という街は、多くの人にとっての“目的地”だということ。それも日本国内だけでなく、世界中からその魅力に惹かれて多くの方がいらっしゃっているんです。このお店は、いわば、そうしたお客さまにとっての京都の玄関口なんですね。以前から、京都ならではの豊かな食文化を生かしたスープを作ることで、この土地を“食”から楽しんでいただきたいと考えていたのですが、今回素敵な出会いにも恵まれて、京都の街にあるスープストックトーキョーならではのスープを作れることになりました。」



一杯のスープから京の食文化に出会う―。そんなシーンを思い描きながら、さまざまな素材を探すなかで、たどり着いたのが「京湯葉」でした。湯葉は、仏教の伝来とともに大陸から伝わったといわれている食材で、もともと精進料理など肉や魚を食べない食の際に貴重なたんぱく質源として重宝された食材です。「京湯葉」のなかでも、特に上質で味わい深いものを探していくうちに一軒の湯葉屋さんに出会うことができました。今回お話を伺ったのは、京都で200年以上も続く湯葉の専門店、「湯波吉」十代目の越智さんです。

― 今日はお時間をいただきありがとうございます。湯波吉さんのお店に着くまでのこの錦市場の賑わいに驚きました。

越智さん「ようこそお越しくださいました。この錦市場は400年以上の歴史がある市場で、魚市場として栄えました。清らかな地下水に恵まれていたことから、さまざまな京の食材の鮮度を保ちながら流通させる市場として発展してきました。京都御所も近く、一流の料理人たちが一流の食材を求めて訪れる『京の台所』呼ばれる市場なんです。今は国内外からの観光客の方も多くとても賑わっていますが、もともとはプロフェッショナルのための卸売りが主流でした。私たちのお店も創業は江戸時代末期頃、200年余りにわたって京湯葉専門店として手作りで湯葉を作っています。」

― 今回、京都店限定のスープを作るにあたって、湯波吉さんの湯葉を使わせていただくことになりました。実際に召し上がっていただきましたが、感想はいかがですか?

越智さん「スープストックトーキョーのスープは、スープというだけあって個人的には“洋”のイメージが強かったんですが、一口食べて、とても “和”を感じました(笑)。湯葉の味わいが楽しめるのはもちろん、冷たいスープというのもこれからの季節にぴったりですね。今回は乾燥湯葉を使ってくれはったのが私たちとしても嬉しいポイントでした。」

― そういっていただけて光栄です。ちなみに「乾燥湯葉を使っている」ことが嬉しいポイントだったのはなぜですか?

越智さん「もちろん生湯葉もおいしいのですが、生湯葉をご家庭で召しあがることができるようになったのは、ここ30年位前からなんです。乾燥湯葉は、冷蔵庫がまだなかった時代に日持ちする保存食でした。生湯葉以上に手間暇がかかるので、最近は乾燥湯葉を作らない企業さんも増えているようです。お味についても、乾燥湯葉は、噛めば噛むほどしっかりと大豆の旨みが感じられるんですよね。スープストックトーキョーさんは、このスープを作る際に戻し汁も使ってはると伺って、そこも分かってくれたはるんやなあと嬉しくなりました。今回使っていただいている湯葉は『とゆゆば』と言って、もともとは屋根の端についている雨どいの“とい”と同じ形状からきています。よかったら、この奥に工場があるのでご覧になりますか?」

― 湯葉ってこんなふうに乾燥させているんですね。なかなか見ることのできない光景ですし、大豆の香りがします。

越智さん「多くの方にとってはなかなか見ない光景ですよね。私にとって『湯葉』は日常そのもので、小さい頃、仕事で会えない父に抱っこしてもらうたびに感じたこの優しい香りが当たり前の存在なんです。お豆を炊くところから、釜にあげて、絶妙な風合いになるまで乾燥をさせて、加工をして。この時代にも全てが手仕事で。たとえば乾燥させるのも、夏はすぐ乾くし、冬は乾くのに時間がかかります。湯葉は繊細なので、とにかく気を配って作り上げます。このこだわりから生まれる本物の良さは届くべきお客さまに必ず届くと思っているんです。」

― すこしおこがましいかもしれませんが、私たちがスープづくりをする上で大事にしていることととても重なります。

越智さん「錦市場という“目利き”が集まる場所で店を構えてきたからこそ、より一層この土地に甘えてはいけないとも思ってきました。時を経るなかで、この街ももちろん様変わりはしていますが、そういう想いや意思というのはずっと大切にしていきたいと思っているんです。」

― このスープを召し上がるお客さまに、なにかお伝えしたいことはありますか?

越智さん「京都駅って、京都の“入口”であり“出口”でもあると思うんです。店長の日髙さんと私も同じ気持ちで、スープストックトーキョーでこのスープを食べてくださった方に、京都をもっと好きになってほしいと思っています。そして、京都のごくごく一部ではありますが湯葉のことも好きになってほしいです。もちろん京都にお住いの方にも、このスープはおすすめしたいですね。自分の街がもっと好きになるような京の魅力を、食を通じて体感してもらえたら嬉しいです。」

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こうしたそれぞれの想いが重なることで生まれた「京湯葉の冷たい澄ましスープ」。今年は、日本の三大祭りの一つでもある祇園祭にあわせて7月1日からの1か月間、期間限定でご用意いたします。熱気と賑わいであふれる祇園の街を訪れた際にはぜひこのスープもお試しください。

スープストックトーキョーのスープは、土地や人、文化や食材との出会いから生まれています。
次はどんな出会いが待っているのでしょうか。これからもご期待ください。

「京湯葉の冷たい澄ましスープ」
販売期間:7月1日(月)〜7月31日(水)
販売店舗:京都ポルタ店

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