商品のひみつ産地だより

季節の愉しみ。おいしさを越えて想いをつなぐ一杯「カリフラワーの冷たいポタージュ」。

夏のはじまり、店舗には白くやさしいスープが並びます。
「カリフラワーの冷たいポタージュ」。
私たち自身も、毎年この一杯に心を奪われています。

季節を味わう「おいしさ」に、理由がある

このスープは、単に素材とレシピの組み合わせではできあがりません。
寒さの中で育つ、冬が旬のカリフラワーの最もおいしい瞬間を見極めて収穫し、スープに仕立てて冷凍する。
時の経過で途端に味が落ちてしまう繊細な野菜だからこそ、その特性に丁寧に向き合い、 静岡の工場から近い畑で育つ野菜を使うことで、料理と農を一体の営みとしてつくり続けてきました。
さらに、カリフラワーの味は毎年少しずつ異なります。素材そのもののおいしさややさしさを、まっすぐに味わっていただくために、10年以上つくり続けてきたスープを、今年だけの、今だけの一杯としてお届けします。

育てる人の想いを、まっすぐに

このスープを支えてくださっているのは、静岡県菊川市の若手農業集団「トップハット」さん。
高齢化が進む日本の農業のなかで、「次の世代に何を渡せるか」を真剣に考え、挑戦を続けている方々です。
畑を訪ねたある日、「よい農家さんってどういう方ですか?」と尋ねると、返ってきたのはこんな言葉でした。
「毎日畑にいる人です。畑に行かないと、土がやきもちを焼く。けれど、畑にいれば、野菜はちゃんと応えてくれる。」

自然は、人の思い通りにはなりません。
でも、丁寧に向き合えば、必ず応えてくれる。
そんな信頼を、畑のなかで日々積み重ねている姿に、私たちも背筋が伸びる思いがします。

一方で、農業の現場は今、大きな分岐点に立っています。
2020年の農林水産省の調査*では、農業従事者は5年で2割減少。約7割が65歳以上で、若手と呼ばれる49歳以下はわずか1割です。
*出典元はこちら(農林水産省ホームページより)

トップハットさんもおっしゃいます。
「近い将来、農業を続けられない農家がかなり増える。日本で暮らすなかでは、たとえ値段が上がっていたとしても食料はありますし、直接的に危機感を感じづらいかもしれません。ですが、農に関わる私たちから見れば、食の未来の課題は待ったなしです」
「先輩方から受け継いできたこの農地を、僕らだけで守っていけるのか不安もある」
それでも、
「子どもに“農業ってすごい”と思ってもらえるようにしたい」
「私たちは、皆さんの身体をつくる食をつくっています。農の仕事はどこまでも尊い」
トップハットさんの言葉には、食の大切さと次の世代に誇れる仕事をつくりたいというまっすぐな願いが込められています。
その言葉には、静かな誇りと覚悟がありました。
手塩にかけて育てられた“わが子”を、丁寧に料理し、お客さまへ。
それが、私たちの果たすべき役割であると、改めて想いを強く持ちました。

スープにできること

スープを通じて「いま」を届けること。
育てられた野菜を無駄にせず、丁寧に料理しておいしく食べていただくこと。
そして、その「おいしい」の声を農家さんに届けること。
それは、課題を一気に解決できるものではないかもしれません。
でも、“小さくても確かにできること”を、迷わずしたいと思っています。
おいしいスープには、理由があります。
生産者さんの暮らしと誇り、想いと技術が詰まっています。
一杯のスープを選ぶことが、誰かと気持ちを交わすことになる。私たちは、それを信じて料理を続けます。

おいしさの先へ。想いをつなぐ一杯でありたい

「おいしい」は、それだけで人を幸せにします。
けれど、その先にある手間隙(てまひま) や想いを知ることで、一杯のスープはもっと豊かに、心に残るものになります。
この夏、どうかこのスープを味わってみてください。
白く、やさしく、澄んだその一杯が、農家の方々と、そして食の未来と、あなたをやわらかくつないでくれることを願っています。

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