Soup Friends

Soup Friends vol.77/ハナレグミさん

聴く者に温かく寄り添う唯一無二の歌声と、楽しく心躍るような曲から切なく感情を揺さぶる曲まで、多彩なサウンドで私たちを魅了し続けるハナレグミの永積崇さん。10月に2年ぶりとなるオリジナルアルバム「SHINJITERU」をリリースしたばかりの永積さんに、今回の作品に込めた想いや、制作過程で感じた自分が” 信じてる” ことについてお話を伺いました。またご自身の食への関わり方を探る中で、「音楽」と「食」の意外な関係性も見えてきました。

──Soup Stock Tokyo( 以下、SST)は利用されたことはありますか?

羽田空港にお店があったときはよく使っていました。時間がなくても食べられるし、一人でも入りやすいですよね。ライブを終えて、ヘトヘトに疲れて羽田に着いて、何か食べないと家にたどり着けないようなときに、吸い込まれるように店に入ったこともありました(笑)。疲れているけどパワーを補給したいときや、体が冷えたとき、気分に合わせて選べるし、こういう時にスープっていいなって思いますね。

──ライブやツアーであちこち飛び回ることも多いと思いますが、食事の面で気をつけていることはありますか?

まずはきちんと睡眠を取ること。あとは食べたいものを食べることかな。量は気をつけながらね。ツアーってあちこち飛び回って自由なように見えるけど、体調管理を気にしすぎたり、疲れると会場とホテルの往復だけになるとか、ストイックな状態に陥ったりすることも。だからできるだけ自分の感覚に耳を傾けるようにしていますね。「自分が何を食べたいか?」とか「身体が何を欲しているか?」とか。ライブではエネルギーをぶつけることが多い分、身体の声を聞いて甘やかしてあげる。

──今回発売されたアルバム「SHINJITERU」について伺います。タイトルの言葉に強さがあるなと感じました。

今、自分がCDを作れる立場にいて、「この街にどういう色を足せたら楽しいのかな?」って思ったんです。そんなときに、世の中に「SHINJITERU」っていう言葉があったらどうだろう?という思いつきのような遊びからイメージが膨らんでいって。CDというフォーマットを使って、東京や日本、世界中に「SHINJITERU」という言葉の花束を点在させていくイメージかな。そうすれば人々の見える景色が少し変わるんじゃないかなって思ったんです。このタイトルが何か一つのきっかけになってもいい。例えばSSTにスープを食べに来て、このインタビューがふと目に止まって「ああ、『SHINJITERU』かあ。私にとって“信じてる”って何だろう?」と考えるきっかけになるとか。「俺はこれを信じてるから」とか、「信じる」って言葉にすると少し仰々しいですよね。でも人間信じてないと生きていけないこともある。自分を信じる強さっていうのかな。そういう誰かの強い気持ちに寄り添える音楽になれたらいいなと思います。

──永積さんにとって「信じてる」ものがあるとしたら、何だと思われますか?

アルバムを制作する中で、自分は何を信じてるんだろう?って考えた時に、僕にとっては「言葉になる手前の感情」かなと。例えば「おいしい」「好き」「愛してる」って言葉ではたった一言だけど、その言葉の手前にはいろんな感情が渦巻いてると思うんです。言葉にならない言葉もあれば、たくさんの感情の揺らぎがある。言葉として表出する前の「揺らぎ」が、実は人間のリアルな部分なのかなって。人間って割り切れない生き物ですよね。愛とか生きるとか、みんな悩んだり迷ったりするけどそこから離れられない。でもそこが人間らしくて愛おしくもある。

──ハナレグミの曲はどのように作られているのですか?

正直いつもどうやって音楽を作っているのか、自分でもわからなくなるんですよね(笑)。方法はその都度変わるけど、ハナレグミの場合は言葉が生まれてから曲を作っていくことも多いです。日常生活の中で曲の断片がひらめいたらノートに書き留めて。この最近のアルバムはどれも濃い時間だったので、今回はこのジャケットみたいに、ささやかな線画のようなイメージで作りました。自分の中では平穏で心地いい、散歩してるような気分になれるアルバムになったと思っています。最近は味も音色もシンプルなものが好きですね。その方が長く愛されるような気がして。余計なものを削いでいって、少ない要素で深みを出す。歌詞も何かを言っているようで何も言っていないような。コンソメスープみたいにシンプルだけど奥深い。そういう音楽を作っていけたらいいなと思います。

──2019年にSSTが20周年を迎えるので、何かイベントをやりたいと思っていて、例えばフェスみたいなことができたらハナレグミにはぜひ出演して欲しいのですが、いかがですか?

スープのフェスだからステージの真ん中に大きな鍋があってもいいね(笑)。みんなで鍋の周りを囲んで、太鼓をドンドコ叩いたり、歌いながらぐるぐる回ったりして、最後に全員にスープを振る舞うみたいな。火にかかった大きい鍋の中にスープがぐつぐつ煮えてて、木のスプーンでよそって食べる感じとかさあ(笑)。

ハナレグミ(はなれぐみ)

永積崇による、ソロプロジェクト。1974年生まれ。高校2年の頃よりアコースティック・ギターで弾き語りをはじめ、1997年、SUPER BUTTER DOGでメジャー・デビュー。2002年夏よりバンドと併行して、ハナレグミ名義でソロ活動をスタート。これまでにオリジナルアルバム6 枚をリリース。2017年10月、2年ぶりとなる7枚目のオリジナルアルバム「SHINJITERU」をリリース。その深く温かい声と抜群の歌唱力を持って多くのファンから熱い支持を得ている。

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