Soup Friends

Soup Friends Vol.64 / 原田郁子 さん

今号のスープフレンズは、昨年バンド結成20周年を迎えたクラムボンの原田郁子さんが登場。ライブをする土地に降り立つと、まずその土地のものを食べるという原田さんのお話を伺っていると、意外なルーツに辿り着きました。また、バンドメンバー・ミトさんの驚きのステージドリンクの中身が判明! 音楽を作り続ける中で原田さんが見出した音楽と食の共通点とは・・・。

──Soup Stock Tokyo をご利用いただいたことはありますか?

はい。二子玉川の駅の中にあるお店に行ったことがあります。スタジオへ行く前に買っていったり、帰りに隣の本屋をのぞいたらスープの良い匂いがしてきて食べちゃったり(笑)。初めて食べたのは、たぶん参鶏湯です。こんなにカジュアルに参鶏湯が食べられるんだ!と驚いたのを覚えています。

──普段、スープ(汁物)はよく召し上がりますか?

自分にとってのスープといえば、やっぱり「ミソスープ」かな。今日は家でご飯を食べられるっていう日は、だいたい余った野菜で味噌汁を作ります。もう究極は「猫まんま」でいいんです(笑)。もしくはご飯、納豆、味噌汁で充分。味噌汁って、年々沁みますね。飲んだ瞬間「はぁぁ~~~」って。10代や20代の頃は、そこまで偉大さをわかっていなかった。

──お味噌汁はどんなお味噌を使われているのですか?

実は、原田家の家系を辿っていくと、麹屋なんです。今でも九州でやっていて、このあいだ家族で行ってみました。なので、最近は「原田味噌」とあごだしで作ってます。ちょっと甘めでおいしいんですよ。

──現在ツアーの真っただ中ですが、ツアー中の食事で気を付けていることや、楽屋のケータリングへのこだわりがあれば教えてください。

2010年から3年間くらい、体調を崩してお肉が食べられない時期があったのですが、その頃は楽屋に炊飯ジャー、包丁、まな板、IHコンロを持ち込んで、ご飯を炊いて味噌汁と食べていました。ミトさんのステージドリンクが味噌汁になったのも、ちょうどその頃かな。

──ライブ中に味噌汁ですか!?

ものすごく汗をかくので、塩分がちょうどいいんだって。あとは一口飲むとほっこりするから緊張しないそうです(笑)。

──実は今春、博多にSoup Stock Tokyoの新店舗がオープンします。原田さんの故郷であり、今回のツアーでも博多へ行かれると思うのですが、博多へ帰ると必ず食べているものは何かありますか。

博多はおいしいものが本当にたくさんあるのですが、帰ったら無性にうどんが食べたくなりますね。博多のうどんはコシがないので、讃岐うどんが好きな人からは「あれはうどんじゃない」って言われそうですが、あのゆるゆるでやわやわがたまらないんですよ(笑)。

──音楽を作っている中で「食」や「食を共にすること」の力や面白さを感じることはありますか?

それはたくさんありますね。クラムボンのメンバーは、基本的にそれぞれが好きな時に好きなものを食べる感じなのですが、小淵沢のスタジオで合宿している時は、マネージャーが作ってくれるご飯をみんなで一緒に食べました。ご飯の時間が終わったらそれぞれのブースに戻って作業をしたりするので、食べながら「こういうのはどうかな?」とかアイデアをパパッと話したり。ツアーでは、ずっと移動しているので、次の町に着いたら、まずその土地のもの、地のものを食べたり飲んだりする。それによって、チューニングが合っていくような感じがするから。

──昨年バンド結成20周年を迎え、3月に発売したアルバム「triology」をもってメジャーレーベルを離れたわけですが、今年は新たなスタートの年になりそうですね。

そうですね。独立して、レーベルも運営していくことになりました。私はよく飲食のお店に影響を受けるんですが、「クラムボン」という暖簾で、いよいよ本格的に、経営も営業も制作もすべて自分たちだけでやっていくんだな、という気持ちです。

──今回のツアーからとても自由で面白いですね。ライブ会場限定でアルバムを販売し、ライブ後はサイン会をして自分たちでCDを手渡すという。

去年は大きな都市をまわるツアーだったので、今年はなるべくお客さんの近くまで自分たちが出掛けていきたい、というのが最初にありました。それと、独立したことによってこれまで出来なかったことが出来る環境になった時、「自分たちの手でCDを手渡せたらいいな」と思ったんです。今はインターネットで手軽に曲を買える時代だけど、逆に今回のようにライブやサイン会で直接顔をみて手渡していくことを大事にしたい。双方にとって、何か新しいコミュニケーションが生まれたら面白いなと思っています。

──音楽を20年続けてきた原動力、これからも続けていく原動力は何だと思われますか?

うーん、やっぱり「音楽が好きだ」ということですかね。やればやるほど「まだまだ」「もっともっと」と深みにハマって、その熱が未だ消えないんですよね。もう完全に取り憑かれてしまってる(笑)。おいしいものを食べて「おいしい!」と感じるのと、音楽を聴いて「きもちいい!」と感じるのは、すごく近いんじゃないかな。料理家の高山なおみさんと「食べることと音楽って似てるよね」という話をしたこともあるのですが、脳の状態も近いものがあると聞いたことがあります。その時の体調やコンディションによって上手く取り入れながら生き延びている・・・という意味でも、似てるのかも。プレイヤーとしても、リスナーとしても、どうしても音楽じゃないと、っていう時があって、音楽でしか摂れない栄養っていうのがあるんですよね。だから、やめられないんです(笑)。

原田郁子(はらだ いくこ)

福岡県出身。東京出身のミト、北海道出身の伊藤大助と専門学校で出会い、95年にクラムボンを結成。シングル『はなればなれ』で99年にメジャーデビュー。当初よりライヴやレコーディングなどにおいて様々なアーティストとのコラボレーションを重ね、楽曲提供、プロデュース、執筆活動など多岐に渡る活動を続ける。02年より自身らの事務所『tropical』を設立。近年ではサウンドシステムを保有し全国ツアーを行うなど、バンドとして独自のスタンスを築き上げている。15年で結成20周年をむかえ9枚目のオリジナルアルバム「triology」を発売。代々木公園フリーライブに始まり、イオンモールツアー、そしてリリースツアーからファイナルの初日本武道館公演まで、意欲的に新たな動きをみせた昨年に続き、今年は2月から新譜のミニアルバム『モメント e.p.』を会場限定で販売する初の完全手売りツアーを全国で開催中。

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