Soup Friends

Soup Friends Vol.50 / 安藤 桃子 さん

しっかりと生きて、きっちりと死ぬ。生々しいテーマを題材に小説「0.5ミリ」を書き上げた安藤桃子さんは、妹の安藤サクラさんを主演に据え、父親の奥田瑛二さん母親の安藤和津さんと多くのスタッフとともに今回映画「0.5ミリ」を完成させました。完成後、ロケ地だった高知県に移住した安藤さん。高知県との運命的な出会いや、彼女の生き方についてお話を伺いました。エネルギッシュでチャーミング、溢れる言葉の中に、大切なメッセージがたくさん隠れていました。

──Soup Stock Tokyo(以下、SST)をご利用いただいたことはありますか?

はい私も、妹のサクラも良く行きます。冬だけでなく夏でもからだを冷やしたくないので忙しい時、野菜を外で食べたい時などに立寄ります。基本的に食事は外食より家で作って食べたい方で、汁物は必ず作りますが、最近移住した高知県での生活では、簡単なので良く鍋もしますね。残ったスープに具材を加えて翌朝も楽しんでだりしています。

──今回の映画「0.5ミリ」の撮影後今年3月に高知県に移住されたと聞きました。

鰹と坂本龍馬の知識くらいしかなく、縁もゆかりもなかったのですが(笑)、撮影をしている間に惚れてしまい移住しました。「0.5ミリ」は小説にした時点で全ての想いを吐き出してしまい、脚本化するのになかなかモチベーションがあがらず、困っていたんです。そんな時に父(俳優の奥田瑛二さん)が仕事で高知県に行って、「0.5ミリは高知県だ!」って帰宅早々言ったんです。私自身、脚本を書くにはリアルな場所に出会うことしか解決策はないと思っていたで、すぐに向かいました。降り立った瞬間「私は高知を描いていたんだ!」と思う程ドンピシャ。肌を刺すような日差しの強い場所で、映画にとって一番大切な光と影のコントラストが美しい。人はラテン気質で明るく、豊かな自然があって、酒文化がすごいので夜の街も賑やか。とにかく全ての生命力が強烈。映画の主人公のサワちゃんは人に正面からぶつかる性格なんですが、高知の人、全員がサワちゃんだった(笑)。

──小説のなかで描いていた景色と、映画の中の風景にギャップはありましたか?

全くありませんでした。やはり高知県に呼ばれていたんだと思います。人生のターニングポイントかな。移住なんて考えていなかったですから。ロンドンで約9年生活して、東京に戻り、そして高知。映画作りはその過程で地元ととても深い関わりを持つんです。撮影期間のたった数ヶ月で、数年間住んだ位の濃く深く広いコミニュケーションを地元の人々と取ったので、移住決断は3秒で決めた。震災後ゆたかさに関して疑問を持って移住する方もたくさんいますが、そういう文脈では全くなかった(笑)。住みたい!と思った場所との出会いは、はじめてのことでした。

──都会で暮らしながら、安藤さんのような感受性を持つためにはどんな視点を持つべきでしょうか?

多くの人が「ねばならぬ」という風に生きがちですよね。それを、「なるがまま」とひっくり返えせたらすごく楽になると思うんです。映画製作もそうだけど、殆どのことが思い通りには行かないことばかりです。だからこそ「なるがままに」と切り替える。すると向こうからやってくるんです、色々なものが。それから、物事を飛び越えるのではなくて、ひとつひとつ丁寧に想いを伝えると、ひとりひとりがハートで受け止めたことがちゃんと伝わっていく。大都市の中にはさりげなく、選択肢が隠れているんだと思います。現状にいつも「クエスチョンマーク」を持つことが大切だと思います。そのままでいい、と思っていると何も起きない。これを読んでくれる皆さんはスープを通して自分の身体に向き合う気持ちが在る。意思が在る人にはその先の道が開けて行くんだと思います。やりたく無い事を「ねばならない」と、必死にやっている人には「死にゃあしない!」と言いたいです。だって平均所得最下位にもなった高知県人が、ゆたかなこころで暮らしている。もちろん、贅沢の種類が違いますが、ゆたかな生活が確実にそこにありますから。

──映画の中でも人と人がぶつかりあう人間関係が描かれていましたよね。そこにはどんなメッセージがありましたか?

うちでは、「摩擦をおこせ!」と親父が言うんです。こころの摩擦を避けてはいけないと。結局人って一人では生きられない。誰も自分のことを見てくれない、ということはとても寂しい。私の両親はとことん、しんどい位に関わって来た。お互いにぶつかりあって「死んでやる!」と言い放ったとしても、それは「愛がほしい!生きたい!」と表裏一体だと思うんです摩擦ってもちろん痛いし、嫌なものですが、それがなければ愛も生まれない。ビンタもキスも摩擦ですから(笑)。否定されたくない、ということが自分にストップをかけるんでしょうか。でも振り幅が大きい程、いろんなことに気がついたり出会えたりする。喜びも苦しみも大きい方が、単純に楽しいと思うんです。

──原動力は何ですか?

「食」(即答で!)。です。食べることは直結して生命力だと思います。そこに「おいしい」が入ってくると、どんなにつらいことがあっても「おいしい」ものには正直になってしまう。味覚で感動できたり、心を動かせれる日々って健やかだと思うんです。いつもそれを自分のバロメーターにしています。どんなに素晴らしい料理を出されても、それをおいしいと感じられない時もあるし、逆にそこそこのおいしさでも大好きな人と食べれば世界一おいしいと感じちゃう。

安藤 桃子(あんどう ももこ)

映画「0.5ミリ」より
1982年3月19日東京生まれ。高校時代よりイギリスに留学、ロンドン大学芸術学部を次席で卒業。その後ニューヨークで映画作りを学び、監督助手として働く。2010年監督・脚本を務めたデビュー作『カケラ』が、ロンドンのICA(インスティチュート・オブ・コンテンポラリー・アート)と東京で同時公開され、その他多数の海外映画祭に出品、国内外で高い評価を得る。2011年に幻冬舎から初の書き下ろし長編小説「0.5ミリ」を刊行。自身の小説を映画化した本作は待望の第2作目。監督業や執筆業、音楽コラムの連載など、多岐にわたり活動している。本作の撮影をきっかけに、現在は高知に移り住み、高知市観光プロモーション映像制作や、映画館プロジェクト等を計画中、土地の魅力を伝えるべく観光特使も務めている。

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