Soup Friends

Soup Friends Vol.20 / 鶴田真由さん

女優としてテレビや映画、舞台などで活躍する鶴田真由さん。ナレーションや朗読などでも評価される、その聡明な声と語り口はまっすぐに心に響きます。自然体で身体にも気を配っていらっしゃる鶴田さんに、食べることや日々の暮らしについて伺いました。

──Soup Stock Tokyo(以下、SST)をご利用いただいたことはありますか?

もちろんです。広尾店にはよく行きます。どうしても忙しくて料理をする時間がない時や、用事と用事の間にぱっと食事をしたい時などに利用します。テイクアウトの方が多いけれどイートインもしますよ。私はスープ好きなのですが、米国にはよく街角にスープ屋さんが出ていて、気軽に食べられるでしょう?だから、SSTが東京にできた時はとても嬉しかったのを憶えています。

──SSTでお好きなスープがあれば教えてください。

しっかりと食べたい時には“オマール海老のビスク”や“東京ボルシチ”をいただきます。軽めにしたい時には“かぼちゃのスープ”や“ヴィシソワーズ”を選びます。“久米島産もずくとオクラのスープ”もおいしかったです。

──ちなみに、スープのお供には白胡麻ご飯と石窯パンのどちらをお選びですか?

白胡麻ご飯です。主人と行く時には、スープ2つと白胡麻ご飯か石窯パンが選べる“スープストックセット”にして、全部違うスープを選んで2人で4種類いただきます(笑)。

──SSTにあったらいいな、と思うサービスがあれば教えてください。

ケータリングとか宅配サービスがあったら嬉しいです。撮影所とかに来ていただけたらすごく有り難いです!

──スープ(汁物)にまつわる思い出があれば、ぜひ教えてください。

子供の頃は人参が苦手だったのですが、母が作ってくれた人参スープだけは食べられました。母が作っているのを見ていたら、お米を入れてあったのが子どもながらに衝撃的でした。お米でとろみを出して、ポタージュ状にしていたのですね。今では私も圧力釜をつかって、よく作ります。

──スープ(汁物)がお好きということでしたが、ご自身でお作りになるスープがあれば教えてください。

最近では、ガスパチョをよく作ります。トマトと玉葱、にんにく、パプリカ、きゅうりをミキサーにかけるだけなので、簡単にできるのにとてもおいしい!そのガスパチョを素麺にかけて、バジルを添えると、冷製カッペリーニみたいでおすすめです。暑くて食欲がない時にはひと役かってくれます。ドライトマトやトマト酵母を入れても、味に深みが出てとてもおいしいですよ。

──酵母のお話が出てきましたが、詳しく教えていただけますか?

しばらく酵母の作り方を習っていたので、酵母をつかった料理や発酵ものに凝っています。昆布で作った酵母は、お米を炊く時に一緒に入れるとお米がふっくらするし、りんごの酵母はスープにしたり。すりおろしりんごで酵母を作った時には、生姜を炒めて、塩豚と、春雨とお野菜を入れて、塩で味を調えるだけなのですが、中華だしも入れてないのに、見事な中華スープになって本当にビックリしますよ!酵母というのは、作りたい酵母の元になる食材を入れて、煮沸した瓶に密封して10日くらい冷蔵庫に入れるだけ。そのあと室温に戻しておくのですが、そのまま食べるなら3日目くらいがおいしいですし、スープに使うなら5日目くらいがちょうどいいと思います。酵母を使うだけで料理が本当においしくなるので、とてもおすすめです!

──食への興味が広がったのは、なにかきっかけがあったのでしょうか?

もう随分前になりますが、野口整体に通い始めたのがきっかけだと思います。身体が冷えないように心がけたり、食生活を気にかけるようになって、そのあとヨガを始めたので、どんどん身体に意識が向くようになりました。身体への関心から食につながっていったのだと思います。

──お仕事柄、食事が不規則になることもおありだと思いますが、ヨガを生活に取り入れたり、健康管理を大切になさっている印象があります。食に対するこだわりなどがあれば教えてください。

なるべく無添加のものを食べるようにしています。ただ、撮影に入ってしまうとどうしてもお弁当が続いてしまったりするので、自分で何かを作っていける時には、家から持って行くようにしています。疲れると胃腸が弱ってしまって、あまり食べられなくなるので、スープのようにあまり胃腸に負担がかからない食事を心がけています。それから睡眠は毎日最低7時間とるようにしていますし、時間がゆるせばヨガをしたりしています。

──女優というお仕事について、日頃どんなことを心がけていらっしゃいますか?

常にベストコンディションで臨むようにしています。その時に整えられる一番良い体調で現場に行くようにします。舞台中はかなり体力を消耗するので、よく眠らないと次の日に体力がもちませんから、帰宅した途端「ただいま、おやすみ!」みたいな生活になります(笑)。厳密なものではありませんが、撮影に入っている時はなるべくその現場のテンションでのまま過ごそうと心がけていますね。そこから大きく外れることはしたくないというか、どこかでそのテンションを意図的にキープしているところはあるかもしれません。

──鶴田さんは旅がお好きだそうですが、旅によく行かれるようになったきっかけを教えてください。

元々、旅は好きだったのですが、学生の頃にインドに行ってみたいなと思ったことがあって、でも当時の私にはまだインドが遠く感じて、ひとりで行けるようなところだとは思ってもみなかったのです。仕事を始めてから、ある時「今旅に出たら、すごく発見がある気がする!」と思ったことがあって、旅慣れた知り合いの方に話したら、「今だと思う時に行動しなさい」と言われました。その時に初めてひとりで出かけたのが屋久島で、いろいろな人と出会えて、発見もあったりして、すごく面白い旅になりました。自が今だ!と感じる時に動くと、それが然るべきタイミングで、いろいろなことが起こってくるんだなと実感したのです。それ以来、よく旅をするようになったし、ひとり旅にも抵抗がなくなりました。ひとりで映画を観に行くのと似ているかもしれません。最初はドキドキするけれど、一回行ってしまうと空いている時間にぱっと行けて便利だし、気が楽だなと思ったりする。ひとり旅もそれに近い感覚だと思います。

──おいしいものを求めて旅をするとしたらどこへ行きたいですか?

香川県で讃岐うどんを食べたいです。讃岐うどんを初めて食べた時は、それまでのうどんの概念を覆されました。その土地に行かないと味わえないですよね。SSTと同じくして、讃岐うどんもファーストフードですね。

──鶴田さんは、神話をひも解き、日本の源をめぐる“ニッポン西遊記”というプロジェクトで旅を続けていらっしゃいますが、始められたのにはどのような経緯があったのでしょうか?

“ニッポン西遊記”というプロジェクトを始めるきっかけになったのは、3年前くらいに外務省のお仕事をしていた関係で、天皇皇后両陛下にお目にかかる機会に恵まれたことです。陛下のお姿や、陛下に対する国民の姿を間近で感じた時に、「日本は、どんな国なのだろう?日本のルーツを探ってみたい」と強く感じて、想いを同じくする仲間と“ニッポン西遊記”を始めました。

──日本をめぐる中で、もう一度行ってみたいと思う場所はどこですか?

どこも魅力的な場所ばかりなので選ぶのは難しいですけれど、しいて言うなら兵庫県の沼島でしょうか。淡路島からさらに船で行く小さな島なのですが、古事記に登場するイザナギとイザナミが国生みを行った最初の島“おのころ島”が沼島なのではないかと考えられていて、日本が生まれた場所だという説があります。あの場所にはもう一度行ってみたいです。

──今、一番興味があることや気になることがあれば教えてください。

今は、日本のことをもっと知りたいという想いが強くあるので、日本の歴史やルーツを掘り下げていくという視点と、現実として今、どんな人たちがどんな活動をしているのかという視点の2本立てで、これからも旅を続けていきたいと思っています。

──最後に、鶴田さんは女優というお仕事のどんなところが興味深いと思われますか?

お芝居というものは、脚本が面白いとお芝居も面白くなると思っているので、これからもいい作品にめぐり会えたら有り難いです。将来的にはおばあちゃんの役もぜひやってみたいですし、歳を重ねてもお芝居を続けていけたら愉しいなと思います。もちろんお芝居以外にも誘(いざな)われることがあればそれもいいなと思いますけど、ひとつ言えるのは、「ものをつくる現場」がすごく面白いということが、お芝居を続けている最大の理由だと思います。ものを生みだす空間に存在するエネルギーは、人を強く惹きつける作用があると思うので、そこに身を置きたいという想いはあります。音楽などでもそうでしょうけれど、人とエネルギーを交換しているという感覚になることがとても好きなのです。お互いの関係性が廻って、そのエネルギーがうまく流れる時が一番愉しいです。でも、そのエネルギー交換は他の職業にもありますよね。例えば、写真家と被写体の間にもあるだろうし、Soup Stock Tokyoのように、お店でスープを提供する側と食べにくるお客さまの間にも。私の場合、そのフィールドがたまたま女優だったということなのだと思います。

鶴田真由/つるたまゆ

女優。1988年テレビドラマ「あぶない少年Ⅱ」でデビュー。「篤姫」「徳川慶喜」「サトラレ」「氷壁」「マルモのおきて」などのテレビドラマや、「梟の城」「半落ち」「沈まぬ太陽」などの映画に出演し、1996年「きけ、わだつみの声」で、日本アカデミー賞優秀助演女優賞を受賞。その他、旅番組やドキュメンタリー番組などへの出演も多い。現在、「森人」(BS日テレ)、「黄金の扉」(NHK BS プレミアム)、「フロンティアーズ~明日への挑戦」(TOKYO FM)にてナレーション出演中。また、日本の神話をひも解き日本の源を探るプロジェクト“ニッポン西遊記”を始動。著書には、アフガニスタンへの旅を綴った「インシャラ」などがある。

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