
- 医療・保育施設
“あなたと共に”× “世の中の体温をあげる”― 理念の共感が導く、医療現場におけるスープの可能性- 岡山中央病院さま
- 理念の共感が導く、医療現場におけるスープの可能性
- 信頼される企業であるために、理念を体現し働くということ
- 医療における食の課題と「Soup for all !」の可能性とは
- 共感を大切に、並走するパートナーでありたい
理念の共感が導く、医療現場におけるスープの可能性
★前編はこちらから 岡山中央病院バースセンターさま
岡山中央病院では現在、人間ドック食と産科食に冷凍スープ、産科のお夜食にはフリーズドライOkayuを導入いただいています。
今回は、岡山中央病院副院長 経営企画室長兼診療技術部部長の渡邉伸作さま、栄養科科長の安田義博さま、栄養科リーダーの西井詩於莉さま、そして当社取締役社長の工藤萌が、医療現場における「食」の役割について語り合いました。
信頼される企業であるために、理念を体現し働くということ
岡山中央病院副院長 経営企画室室長診療技術部部長 渡邉伸作さま:
岡山中央病院の理念は、「あなたと共に」です。
あなたの為にでは、あなたの為にしてあげているという上から目線の言葉が続きます。あなたを治してあげるという高慢さではなく謙虚に共に医療を行っていく、そしてその姿勢は患者さんだけでなく家族や職員、社会誰に対しても同じ姿勢であるという当法人の理事長が大切にし、職員皆に浸透している基軸です。
岡山中央病院副院長 経営企画室長兼診療技術部部長 渡邉伸作さま
渡邉:
病院には、患者さんやご家族など、さまざまな「不安を抱える人」が訪れます。
大切なのは、その関わりにどれだけ心を込められるか。
場合によっては根治が難しいこともありますが、それでも「岡山中央病院で診てもらってよかった」と思っていただくためには、やはり”心”が何より大切なのだと思います。
良くないのは、病気は治っても、患者さんが不満を抱えてしまうことです。
その要因の多くは、コミュニケーション不足にあると思います。
十分な対話を行い、患者さんが理解し、納得していただくことは医療者の大事な役割です。職員同士でもコミュニケーション不足で人間関係の不満が増えれば、結果として医療の質も安全の低下を招きます。
ここを大切に、真摯な医療を地域に認めていただき、理解と信頼を得られれば、病院は必要とされ存続していくと私たちは考えております。
また病院運営は、病院食の食材、電気や水、さらには針一本が欠けても成り立ちません。そう考えると、病院は社会に生かされている。
私たちは患者さんだけでなく外部の会社の方にも同様に上下なくコミュニケーションを大切に、より関係性が高まることに感謝という姿勢を常に目指しています。
互いに感謝し合い、信頼し合い、力を合わせて顧客の役に立つ。 当法人はそれを「あなたと共に」と理事長が定め、理念として掲げています。
スープストックトーキョー取締役社長 工藤萌:
スープストックトーキョーの理念は「世の中の体温をあげる」です。言葉は違いますが一緒だと感じました。
私たちは、スープ屋だけどスープ屋じゃないと考えています。スープはあくまでも手段。
そのスープを通じて私たちが成し遂げたいのは、「目の前の方の心の体温をあげること」。
目の前の方の体温をあげられたら、もしかしたらその方がどこかで他の誰かを温めているかもしれない。
その連鎖によって自然と世の中全体が温まっていく。
そしてその連鎖は、私たち働く仲間にも返ってきて、更にまた別の方も温めるエネルギーになっていく。そう考えています。
渡邉:
人生で望むことは、単なる働きやすさや利益ではないんですよね。
社会の役に立ち、皆さんに喜ばれて、私もうれしいという”働きがい”の方が圧倒的に大事だと思います。
工藤:
その空気感は、岡山中央病院の皆さまにも感じました。
今日廊下を歩いていたら、職員の方々が優しく挨拶や会釈をしてくださって、「こんなにおもてなしの意識が高いんだ」と、私たちの理念と重なるものをすごく感じたんです。
理念がお題目になってしまうことってよくありますが、しっかり理念が現場に根付いていらっしゃるんだなと思いました。
渡邉:
気づいていただいて、ありがたいです。そこは当法人がとても大事にしているところです。
スープストックトーキョー取締役社長 工藤萌
工藤:
私たちの働く仲間は、1600人ほどいますけれど、全員が理念を言えます。
言えるだけではなく、「自分にとって、世の中の体温をあげるとは何か」を考え続けられるメンバーです。70店ほどある店舗では、「体温のあげ方」といったおもてなしマニュアルはないんです。
一人ひとり違うお客さまと向き合い、迷った時は「この方の体温をあげられるか」という理念が指針になります。
先日、「スープストックトーキョーの接客は、接客というより優しさや思いやりだ」という言葉を、わざわざメールでくださったお客さまがいて。
渡邉:
それはうれしいですね。
言葉では優しさや思いやりといった表現にも置き換えられますが、要は「目の前の人の体温をあげたいんだ」という一点で、自分なりのやり方で「体温をあげた」実体験は、絶対に本人もうれしいですよ。
その気持ちが伝わるからこそ、お客さまからもそういう言葉をいただけるのだと思います。まさに当院の理念と同じです。
工藤:
社会には「体温が低い」場所も多いように感じています。
けれども、誰かが着火しないと始まらない。私たちは、まずは着火できる人でありたいんです。
その小さな着火の連鎖が、世の中にじんわり広がっていくことを目指しています。
医療における食の課題と「Soup for all !」の可能性とは
工藤:
私たちは「世の中の体温をあげる」という理念を体現する活動として、「Soup for all !」という、簡単に言うと食のバリアフリー活動を行っています。
健康上の理由、宗教上の理由など、さまざまな制約がある方でも、食事は一様に生きることの基本です。
ちょっとの配慮で、皆同じテーブルを囲むことができる。そして温かいものを「おいしいね」と皆で言い合える時間はとても尊いと思います。
そうした想いから、アレルギー情報の開示のほか、ベジタリアンスープや離乳食などを開発してきました。
2024年に一部の商品がユニバーサルデザインフードとして販売できることになったこともあり、医療・介護の分野でも、お役に立てることはないかと考えています。
医療分野については試行錯誤で勉強させていただいているところなのですが、医療的ケア児や胃ろうの方と実際にお会いしたりお話を伺ったりすると、いかに食事が大切であるか、そして食事を囲む時間が大切であるかを痛感します。
なかには、「一生に一回でいいから、家族と外食に行きたい」とおっしゃる方もいて、私たちに何が出来るだろうかと、その言葉が心に残っています。
岡山中央病院栄養科科長:安田義博さま
栄養科科長 安田義博さま:
私は元々飲食店で勤務しており、2006年から岡山中央病院の食事を担当しています。
病院食に関わるようになり、食べたくても食べることができない人がいること、また食事を残したら命に関わる、ということに気づきました。
「食事は栄養を摂取し、命をつなぐもの」と知り、丁寧に調理する必要性を感じました。
渡邉:
入院患者さんは、食事を食べていても99%の方が体重が減ります。
病院食は、味を気にするよりも減塩やカロリー計算を細かく管理しなければならないため、あまりおいしいとはいえないものが多い。しかし、本当にそれが患者さんの元気に繋がるかと言ったら、その考え方自体にズレているところがあると感じています。
食欲がなくなったり、食が細くなる方が多いので、本当に患者さんの元気に繋がることを考えたら、おいしくて少量でも高カロリーのものがありがたい時も多い。
安田:
一般的に、病院の食事は「おいしくない」「冷めている」いう印象を持たれがちです。だからこそ、患者さんが食べてくれるような調理をしなければならない。食形態も違えば、食べてよいもの・控えるべきものも人によって異なります。
私は調理師なので、 調理技術をもっていかに食べていただくかを常に考えています。
栄養科リーダー 管理栄養士 西井詩於莉さま
管理栄養士 西井詩於莉さま:
食欲が落ちて、ご飯が食べられない人には、栄養補助食品を何種類か用意して、患者さんのお口に合ったものをお出しするんですけど、補助食品は甘いものが多く、甘いものが得意な方は食べられるのですが、そうじゃない方もいらっしゃいます。
そうした方に「どのように栄養を摂っていただけるか」は日々の悩みです。以前、そういった方にコーンスープをお出ししたことがあるんです。
飲めないかなと思ったのですが、意外にも自らすすんで飲んでくださって。
その姿を見て、料理に近い形で栄養やカロリーを補える食品の必要性を感じました。しかし実際には、そうした商品はまだあまり普及していません。
特に噛むことや飲み込むことが難しい方の場合、食べやすくするために料理をミキサーにかけると、見た目からは元の料理がわからなくなり、それがかえって食欲を失わせてしまうこともあります。
スープは見た目を損なうことなく食べられるので、食欲をそそる力があります。
今後はこうした商品が普及して、患者さんの栄養の改善に役立てたらいいなと、栄養士としては感じているところです。
工藤:
減塩や高カロリーのニーズは、他の医療関係者、介護関係者の方からもよく聞くので、これからの社会には絶対必要だと思います。おいしさとの両立はとてもハードルが高いことを認識していますが、継続してリサーチや研究をしていく必要を感じます。
渡邉:
Soup Stock Tokyoのスープのように、おいしさを楽しみながら入院期間を過ごせ、さらに退院後もご家庭で手に取れる商品であったり、量が少なくてもおいしく高カロリーで栄養を補える食品があれば、医療の現場では大きなニーズがあると感じます。
工藤:
食事や、食事を提供する場を持っていることによって、私たちにはできることがたくさんあると思うので、障がいのある方、ご病気の方、ご高齢の方など、その方々に寄り添った食事風景を実現できる体力をつけるためにも、成長していきたいと考えています。
また、医療分野でお話を聞くと、医師や看護師が、夜勤やタイトなスケジュールでお仕事をされている実態を知りました。
ある地方の病院の方は、時間もゆっくりとれないし、コンビニやスーパーまでも遠くて思うように食事が取れないと。患者さんの健康を大切にする一方で、ご自身のお食事はやむをえず後まわしになりがちだということなのですよね。
患者さまの体温をあげたいことはもちろんですが、職員の皆さまが長く健康的に働くためにぜひ私たちの冷凍スープが、お役に立てるならありがたいですね。
それこそが、私たちが貢献できる医療での「Soup for all !」なのではないかなと思っています。
渡邉:
ヘルシーで栄養があって、必要なカロリーがあるスープがあったら医療職員もうれしいと思うので、本当にありがたいです。
共感を大切に、並走するパートナーでありたい
工藤:
今回お話しして、共感できる点が多く、すごくうれしさを感じています。
そして、そのように深く共感できる岡山中央病院さまと接点を持って連携できているということは、当社の社員たち、今回でいうと、法人営業のメンバーが理念を体現して仕事をしているからなのだと、改めて感じました。
お客さまからの信頼にどう応えるのかを考えたとき、やはり大切なのは理念だと思っています。
スープストックトーキョーに携わる全員が、その理念を体現できているか。
しかも「To do」ではなく、「Want to」でできているかが重要です。
理念に共感し、「この理念を実現したい」と思う人たちがブランドをつくっている状態こそ、とてもヘルシーだし持続可能なのではないかと思います。
渡邉:
私も食事において栄養科や安田をそして産婦人科バースセンターの人たちを心から信用しています。企業としてこれほど心強いことはないですよね。
業種が違っても、同じ社内風土で進んでいることが何よりうれしいです。
同じ気持ちを持つ方々とお仕事をしたいし、共に歩みたいという考え方は、スープストックトーキョーさんと同じだと思うので。
今回お話しできて本当にうれしかったです。
工藤:
そういうパートナーさまとご一緒できて、私もとてもうれしいです。