Soup Friends

Curry Friends 特別編 / シャンカール・ノグチ さん

「東京カリ~番長」の貿易主任であり、「東京スパイス番長」ではリーダーも務め、祖父の代から続くスパイス貿易を生業とするシャンカール・ノグチさん。日本におけるカレーブームは、この方なくしては生まれていなかったのでは?と思うほど、カレーへの造詣と知恵とアイデアに溢れています。ここでは、今夏Soup Stock Tokyoに新しく登場するカレーを召し上がっていただきながら、「日本人はなぜカレーが好きなのか?」という謎に迫ります。

──今日は最初にSoup Stock Tokyoのカレーを召し上がっていただいたのですが、お味はいかがですか。

どれも味の落としどころがきれいですね。良い意味でスープっぽいカレーで、煮込むことにとってお肉の味がよく出ているので、具材だけじゃなくルーも楽しむことができる。この魚のカレー(※「魚のスリランカ風スパイスカレー」)もおいしいです。酸味がきいてますが、何で酸味を出しているんですか。

──実は梅干しです。このカレーとサンバール(豆と野菜のスパイスカレー)という商品は本場ではタマリンドを使って酸味を効かせるのですが、梅干しを使ってアレンジしています。

面白いですね。もっと優しい味のものが多いのかと思っていましたが、辛いものはちゃんと辛味がツーンとくるしおいしいです。

──ありがとうございます。日本人にとって、カレーはやはり特別というか、それぞれこだわりや思い入れのある食べ物だと思うんですね。日本人はなぜそんなにカレーが好きなんでしょう。

ホント不思議ですよね。中国でも韓国でもカレーってそこまで流行ったことはないと思うのですが、日本での流行り方は異常ですし、全国でいろいろな種類のカレーを食べることができます。新宿中村屋でラス・ビハリ・ボースさんが初めてインドカレーを伝えたという歴史がベースにはありますが、私はやっぱり70~80年代の高度経済成長が影響していると思っています。日本の景気がどんどん上がっていた当時、インドから腕の良いシェフが来日したり、インド人もたくさん流れてきて、ナンやバターチキン、マトンが食べられるレストランが一気に増えました。それと、日本の米文化とカレーがちょうどマッチしたのも大きいと思います。

──日本ほどではないにしても、カレーはどこの国へ行ってもだいたい食べられますし、そういった光景を目にすると、カレーの懐の深さを感じます。

それはやっぱり“カレーのスパイスに薬効があるから”なんでしょうね。ターメリックは体調を整えてくれて滋養強壮に効く。コリアンダーは胃腸に良かったり、唐辛子は発汗作用があり身体をすっきりとさせてくれる。カレーに使われているスパイスは生薬でもあり、うまく利用して食べると身体が反応してくれる漢方なんです。それはインドにも古くからある伝統医学のアーユルヴェーダ(生命の科学)にも通じます。日本の食べる健康法の言い方で言えば“医食同源”。どんな民族でも、人の身体はそういったものを自然と求めているのかもしれませんね。

──インドでは、今でもそれぞれの家庭でお母さんが家族の体調を見てスパイスの調合を変えたりなどしているのですか。

はい。家族の体調に合わせてお母さんがガラムマサラ(※主にインド料理で使われるミックススパイス)を作っています。以前、インドのグジャラートという地方へ行った時、工場長の奥様が持っているノートを見せていただいたことがあるのですが、そこには“スパイスの家系図”が載っていて、誰はどこが悪いから、何のスパイスを何グラム使うとかが、細かく記してありました。

──お祖父さまの代からやられていたスパイス貿易の仕事をご自身でもやろうと思ったのは、何かきっかけがあったのでしょうか。

小さい頃からスパイスに囲まれて育ったので、自然とその流れになったというのが正直なところですが、カレー作りをスパイスから考え本格的に始めたのは20代半ばくらいです。私の場合、焙煎の方法も時間もスパイスごとに変えているのですが、素材や火加減によって反応がぜんぜん違うところが面白いですし、それをどうやって料理に生かそうか考えるのがとても楽しいです。

──今ではオリジナル商品もたくさん販売されていますね。今日拝見したガラムマサラも、スパイシーかつ深い香りでお腹がすいてきてしまいました。

最初はスパイスの輸入と卸売がメインだったのですが、ここ10年でオリジナルのスパイスミックスを作るようになりました。焙煎からパッケージまでインドで行っているのですが、最初の頃は何度もインドへ行って交渉したりテストしたりと大変でした。いま扱っているスパイスはカレー用だけで20種類近くありますが、アチャールというインドの辛味漬物も人気です。あとは、マンゴーチャツネやマサラチャイミックスなど、インド料理に必要な食材も扱っています。インドのスパイス商の中には祖父の代から輸出してくれているところもあり、今は孫同士で取引しています。

──シャンカールさんがいま注目しているスパイスを教えてください。

扱いが難しくて輸入するのが難しいのですが、カシミリ・チリーというスパイスがいま面白いですね。辛味が少なくピーマンの香りが心地よいチリーです。それを使った新しいチリーパウダーを開発しているところです。何種類ものチリーを合わせて作るのですが、これをカレーに使えたら、辛味香り豊かなカレーができるのですよ。

──Soup Stock Tokyoでこんなカレーが食べられたら面白いんじゃないか、というアイデアがあったら聞かせてください。

マトンとカシューナッツががっつり入った、マトンコルマはどうでしょうか。カシューナッツの優しい感じはSoup Stock Tokyoのお客様にぴったりですし、ぜひマトンを使っていただきたいですね。あとは、ダルを使用したクリーミーなカレーやダルタドゥカも、シンプルに豆を味わえるのでおすすめです。野菜系だったら、ナスを潰して作るベイガン・バルタも良いかもしれません。

──来年もまた「Curry Stock Tokyo」を開催することになったら、東京スパイス番長×Soup Stock Tokyoのコラボレーションカレーを作ってみたいです(笑)。それでは最後に、今度挑戦してみたいことを教えてください。

スパイスの知見をさらに広げるために、南米の方へ行ってみたいと思っています。東京スパイス番長の活動でインドには毎年行っていますから、個人的にはコスタリカやメキシコの多種のチリーや他スパイスを存分に味わってみたい。きっとまだまだ知らないことがありそうですからね。

シャンカール・ノグチ(スパイス商人)

1973年、東京生まれ。貿易商。アメリカ留学後、インド・パンジャブ地方出身の祖父L.R.ミグラニが立ち上げたインドアメリカン貿易商会の3代目として、インド国内の市場を巡りつつインド食品の輸入、オリジナル商品の開発と販売を手がける。世界中に弟子を持つドクターパルタップにアーユルヴェーダを基礎から学ぶ。著書に「ハーブ&スパイス事典 世界で使われる256種」「スパイス選びから始めるインドカレー名店のこだわりレシピ」や「インドよ!」がある。【好きなスパイス】①カルダモン ②クミンシード ③レッドチリ

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