- 調剤薬局
株式会社タカサさま
- 薬局が「健康のハブ」 になるために。 反対意見を乗り越え、 スタッフと患者さまの笑顔を生んだ挑戦 -株式会社タカサ-
- 理念の実践: 薬局は「病気の人」 だけが来る場所ではない
- 「冷凍庫代すらもったいない」 導入を阻んだ社内の大きな壁
- タイアップクリニックとの関係性も丁寧に
- 現場の理解を得るために:「試食」と「対話」を重ねる
- 「処方箋なし」 でスープを買いに来る。薬局に生まれた新しい風景
- 薬以外のソリューショ ンを持つことが、 薬局の未来を拓く
- 導入を検討する薬局の皆様へ
薬局が「健康のハブ」 になるために。 反対意見を乗り越え、 スタッフと患者さまの笑顔を生んだ挑戦 -株式会社タカサ-

薬局タカサ店内。 右手にはSoup Stock Tokyoの冷凍庫が設置され、 待合スペースから見える動線設計に
千葉県を中心に調剤薬局や介護事業を展開する株式会社タカサ。「医療産業の中にあり 、総合的に人と関わりを持ち、 安心して相談してもらえる場所であること」 を理念に掲げる同社では、 新たな取り組みとしてSoup Stock Tokyoの冷凍スープ販売を開始しました。
「薬局でスープ? 」 という社内外の戸惑いを乗り 越え、 今ではスタッフが自信を持って患者さまにおすすめし、 処方箋なしでの来店客も生み出すほどの反響を呼んでいます。 導入の背景には、薬局が「対物(薬) 」 から「対人(健康支援) 」 へと役割を変えていくための、 本気の挑戦がありました。
理念の実践: 薬局は「病気の人」 だけが来る場所ではない

株式会社タカサ 専務取締役 鎗田吉正さん(右) と、 導入担当 櫻木智子さん(左)
鎗田(専務) :
私たちの理念にある「医療」 とは、 単に病気を治すことだけではありません。健康の維持、回復、 そして増進までを含みます。人が健康であるためには「運動」「食事」「コミュニケーション」 が不可欠です。 しかし、 従来の薬局は「病気になってから薬をもらいに来る場所」でした。
私たちはそこから一歩進んで、 病気になる前の人や、 回復期の人がさらに健康になるためのサポートをしたかったのです。
櫻木(導入担当) :
以前から健康食品などは扱っていましたが、 どうしても「薬局に置いてあるもの」 の域を出ず、食品分野は苦手としていました。 そんな時、 Soup Stock Tokyoさんのお話を伺い、「これだ! 」と直感しました。
鎗田:
私自身、 以前からSoup Stock Tokyoのスープを食べていて、 その「素材感」や「繊維質の多さ」に驚いていました。 レトルトとは全く違う、しっかりとした食事としての満足感がある。
これなら、 普段は薬の話しかしない薬剤師たちも、「これを食べたら絶対健康になるよね」 と自信を持っておすすめできる。 そう確信しました。
「冷凍庫代すらもったいない」 導入を阻んだ社内の大きな壁
導入決定後、 順風満帆に進んだわけではありません。むしろ社内からは強い反発がありました。
最大のハードルは「コスト」と「現場の負担感」でした。
鎗田:
正直にお話しすると、 最初はかなり 反対されました(笑) 。 例えば、 導入には専用の冷凍庫が必要なのですが、「そのレンタル代金や電気代の元が取れるのか? 」 という声が上がりました。「スープを何杯売れば利益が出るんだ? 」と詰められることもありましたね。
櫻木:
現場のスタッフからも、 「なんで私たちがスープを売るんですか? 」 という戸惑いの声が多かったです。 薬剤師や医療事務のスタッフは、当然ながら「医療従事者」 としてのプライドを持っています。 そこに突然「販売業」 のような業務が入ってくることへの抵抗感は、想像以上に大きかったです。「忙しいのに余計な仕事を増やさないでほしい」という空気もありました。
さらに、 「処方箋でお金をいただいているのに、 他のものまで買ってもらう のは申し訳ない」という声もありました。 この”販売への罪悪感”は、 医療従事者特有の心理的ハードルだと感じました。
鎗田:
それでも導入を押し切ったのは、 これが単なる物販ではなく「患者さまとのコミュニケーションツール」 だと考えたからです。 利益がトントンでもいい。 スープをきっかけに「タカサに行けば何か体にいいことがある」 と思ってもらえれば、 結果として処方箋枚数も増えるはずだと、 社内を説得していきました。
タイアップクリニックとの関係性も丁寧に
櫻木:
もう一つ重要だったのが、タイアップしているクリニックの先生方への説明です。 門前や院前の薬局では特に、 「勝手に何か売っている」 と思われるリスクがあり ます。 ドクターから「うちの病院の前で何をやっているんだ」と言われる可能性もゼロではない。
そこで、導入前にクリニックの先生とスタッフの皆さまに試食会を実施し、「Soup Stock Tokyoという安心できるブランドです」「患者さまの健康のためにご提案しています」と丁寧に説明しました。
すると先生方も実際に食べて「これはいいね」 と納得してくださり 、中には「こういう症状の患者さんには、東京参鶏湯をすすめてみたら? 」とアドバイスしてくださる先生もいらっしゃいました。 医療機関との信頼関係が深い薬局ほど、 この事前の丁寧なコミュニケーションは欠かせないと思います。

現場の理解を得るために:「試食」と「対話」を重ねる
冷ややかな反応だった現場の空気を変えるため、地道な取り組みを重ねました。
櫻木:
薬剤師は成分を気にします。「塩分は高くないか」「添加物は入っていないか」。 実際にパッケージの裏面を見て、添加物が入っていないことや、 しっかりした味なのに塩分が控えめ(多くが2g以下) であることを確認すると、「これなら高血圧の患者さまにもすすめられる」「お子さまにも安心だ」と、 専門家として納得してくれました。
さらに弊社では独自に、 商品ごとの塩分量やアレルギー情報を一覧にした「成分表」を作成しました。 これを見せながら説明できることで、 薬剤師も安心して提案できるようになりました。
具体的な導入ステップ: 現場を変えた「3つの打ち手」
打ち手①: まず「食べる」 —— 全種類の試食会で言葉を揃える
櫻木:
導入店舗では必ず、 全種類の試食会を実施しています。 1個を開けて小さなカップに分けて、 商品の特徴やおすすめポイント、 「こういう体調の方に向いている」 などを話しながら食べてもらいます。 なぜうちの会社でこれを取り扱ったのかも、 最初から丁寧に説明します。
最初は「なんで薬局でスープ? 」 と半信半疑だったスタッフも、 一口食べると表情が変わるんです。「あ、 おいしい! 」「これ、 本当に冷凍? 」 という驚きの声。 そして実際に原材料や塩分を確認して、「添加物が入っていない」「塩分2g以下なのにこの味」 と知ると、「これなら自信を持っておすすめできる」 という納得に変わっていきました。
鎗田:
特に印象的だったのは、 最初かなり反対していたスタッフが、 試食後に一番の推進派になったことです。 食べる前と食べた後では、 まったく 違う反応になる。 やはり 「自分がおいしいと思ったもの」 じゃないと、お客さまにも自信を持ってすすめられませんから。
食べる → 腹落ちする → 自分の言葉で語れる。 この順番が崩れると、「置いてあるだけ」 になって売れ方が鈍ることが見えてきました。
打ち手②: 売り込みではなく 「手渡し」 から—— ハードルを下げる
櫻木:
最初から「販売してください」と言っても現場は動きません。 そこで、 「処方箋をお待ちの時間にどう ぞ」 とリーフレットを渡すだけでもいい、 というところから始めました。Soup Stock Tokyoさんが提供してくださった販促物(リーフレット)がとても助かりました。
商品力があるので、 何もしなくてもある程度は売れます。 でも、そこに信頼している薬剤師やスタッフの「ひと言」が乗ると、動きが明らかに変わるんです。これは薬局ならではだと思います。
打ち手③: 販売応援で「成功体験」 を作る
櫻木:
私自身、 導入直後は週に2回ほど店舗に入って販売応援をしました。 実際にお客さまに声をかけて、 その場で買っていただく 流れを見せることで、 「ああ、 こうやるんだな」 と現場のスタッフも掴んでくれました。
そして一番大事なのは、 お客さまから「前回おいしかったから、 また買いに来たわ」「教えてくれてありがとう」 と言われる体験を重ねること。 この成功体験が積み上がると、 スタッフのマインドがガラッと変わるんです。

Soup Stock Tokyoが提供した販促物の一例
「処方箋なし」 でスープを買いに来る。薬局に生まれた新しい風景
導入後、 店舗ではこれまでにない変化が起きています。
櫻木:
一番の驚きは、「処方箋を持っていない方」 がスープを買いに来店されるようになったことです。これまで薬局は「用がないと入り づらい場所」でしたが、 店舗のガラス面に大きなポスターを貼ったことで、「ここ、 スープストック売ってるの? 」と気軽に入ってこられる方が増えました。
鎗田:
駅前の店舗では、 冷凍庫の側面が見えるサイズのポスターを貼ったら、「Soup Stock Tokyoですか? 」 と言われることもあって(笑) 。 ある意味、 ブランドに乗っかれているのは強みですね。 薬局のイメージが明るくなり 、処方箋を持っていなく ても「ちょっと寄ってみよう」という入り やすさが生まれました。
櫻木:
小児科の門前薬局では特にお母様方に好評です。 購入されるのは30〜40代の女性が中心で、 平均すると1回あたり 2〜2.5個購入されています。「子どもの看病で疲れてごはんをつくる元気がない」「病院と薬局で待って疲れたから、 今日のごはんをここで買って帰れると楽」というお母様が、 「これなら罪悪感なく食べられる」「自分へのご褒美に」と購入されます。
人気商品はとうもろこしとさつま芋のスープや東京ボルシチ、冬場は牡蠣のポタージュや東京参鶏湯。
季節に応じてラインナップが変わることで、 「新しいのが出たんだ」と楽しみにしてくださる方も増えています。
最初は「売るのが難しい」 と言っていたスタッフも、 患者さまから「前回美味しかったからまた買いに来たわ」「教えてくれてありがとう」 と感謝される体験を重ねることで、 意識がガラッと変わり ました。「売る」のではなく 「患者さまの健康のために良いものを紹介する」というマインドに変化したのです。 今ではスタッフ自ら「こういう配置にした方が売れるのでは? 」 と提案してくれるまでになりました。
現実的な運用課題と、柔軟なサポート体制
櫻木:
正直にお伝えすると、日々の運用面での課題もあります。回転が速い店舗では在庫がすぐになくなるので、発注数を調整したり、補充頻度を考えたり、地味なオペレーションは確実に発生します。「入れて終わり」ではないんです。
ただ、Soup Stock Tokyoさんは私たちの状況に合わせて柔軟に対応してくださっています。例えば、回転が速い店舗で基本の9種類ではなく12種類まで種類を増やしたいという相談をした際も、快く対応いただけました。また、チラシや販促物についても、薬局の現場ならではの要望を取り入れて一緒に作成してくださるなど、メーカーと販売店という関係を超えて、協働で作り上げていく姿勢が心強いです。
鎗田:
患者さまはお金を使いたくないわけではない。『自分を大切にしてくれる提案』を待っているんです。スタッフがそれを実感できたことが最大の成果かもしれません。
薬以外のソリューショ ンを持つことが、 薬局の未来を拓く
鎗田:
経営的な面で見ても、 スープ単体でしっかりと黒字化できています。 しかしそれ以上に、 薬局の中に「薬以外の武器」 を持てたことが大きい。 そして、 社内の空気が変わったことも予想外の成果でした。
この取り組みをきっかけに、 「薬局でこれができたなら、 次はスポーツジムでも」「本社のショールームでも扱えないか」 といった発想が社内で自然に出てくるようになりました。 新しいことに挑戦することが、 以前よりも許される、 むしろ推奨される文化が育ち始めています。
患者さまは、 本音を言えば「薬をもらう時間は短い方がいい」と思っています。
でも、 もしそこで「風邪を早く治すための食事」 や「疲れた体を癒やすスープ」を提案されたらどうでしょう?それは「薬を渡すだけの人」 から「私の健康を考えてくれるパートナー」 へと、薬剤師の価値が変わる瞬間です。
櫻木:
Soup Stock Tokyoさんは、 私たちの薬局という特殊な環境に合わせて、 販促物や売り場作り など非常に柔軟に対応してく れました。 メーカーと販売店という関係を超えて、 一緒に患者さまの喜びを作っている感覚があります。
鎗田:
今後はスポーツジム併設店など、 さらに展開を広げていく予定です。
導入を成功させるために大切にしたこと
櫻木:
振り返ると、 いくつかのポイントが重要だったと思います。 まずはスタッフ全員が商品を理解し、 自分の言葉で語れるようになること。 そして「売る」のではなく「患者さまの健康のために良いものを紹介する」 というマインドを持つこと。さらに、 門前・ 院前のクリニックとの信頼関係を大切にすることです。
鎗田:
あとは、 最初から完璧を目指さないことですね。 小さく始めて、 現場の反応を見ながら調整していく 。 私たちも試行錯誤の連続でしたから。
導入を検討する薬局の皆様へ
鎗田:
悩んでいる時間って、 心がつらいだけで意味がないことも多いんです。 考えるのは論理的な話ですが、 悩むのは感情の話。 やってみないと分からない壁もありますが、それを超えた先には、 患者さまもスタッフも笑顔になる新しい薬局の姿があるはずです。
櫻木:
最初は大変です。 抵抗も出ます。 でも、 食べて、 理解して、 少しずつ声をかけていくと、 現場は変わります。 患者さんに喜ばれると、 やっぱり楽しいんです。 薬局でそれが起きるのは、すごく価値があると思います。

株式会社タカサ
千葉県を中心に調剤薬局、 在宅医療、 介護事業等を展開。「医療産業の中にあり、 総合的に人とのかかわりを持ち、 安心して相談してもらえる場所であること。 お客さま一人ひとりの『心のオアシスでありたい』」を理念に掲げる。 1980年の創立以来、「病める人と、 その家族の心のオアシスでありたい」 という想いのもと、 薬、 健康、 福祉を通じて地域の人々と総合的に関わり続けている。
取材協力: 専務取締役 鎗田吉正さん、 薬局部 薬局管理課 薬局仕入係 係長 櫻木智子さん