世の中の体温をあげる企業として食品ロスをゼロにすることを目指し、一部の店舗では閉店前の時間帯で商品の調理量の調整をおこないメニュー数を絞った提供に切り替えることで極力ロスを出さない取り組みを行ってきました。
今回は店舗で調理後に残る茶葉と檸檬の皮を活用し、新たな価値や商品を生み出す取り組みをご紹介します。

Soup Stock Tokyoで7/27(月)から外食店舗全店で販売をスタートする「チャイと檸檬のホワイトエール」(※)は、店頭のドリンクメニュー「職人のほうじ茶のチャイ」を煮出して濾した際に出る茶葉やカルダモン、クローブといったスパイス、また「瀬戸田レモンのレモネード」のレモネードシロップをつくる際に絞った檸檬の皮を活用して作ったクラフトビールです。このホワイトエールは、日本で初めてゼロ・ウェイスト宣言をし、町全体でごみ問題に取り組む徳島県上勝町のクラフトビール工場の協力を得て作っています。
※「チャイと檸檬のホワイトエール」は、現在販売終了しております

「チャイと檸檬のホワイトエール」の開発の裏側には、食品ロスプロジェクトのリーダーである坂本勇太(Soup Stock Tokyo アトレ大船店店長[2019年当時])が、店舗で感じたお客様とのコミュニケーションがきっかけになっています。今回は坂本に、本プロジェクト完遂までの道のりと想いを伺いました。

坂本:アトレ大船店では独自の活動として食品ロスへの取り組みをお知らせするためのメッセージカードの配布と取り組みに対するお客様へのアンケートを実施いたしました。お店を営む上で閉店時に食品ロスを出さないということは、閉店間際になると品切れになっているメニューがあるということですが、お客様の理解はとても深く温かい言葉や取り組みを応援してくださる方々が大勢いらっしゃいました。
お客様に寄り添いながらしっかりと環境問題にも向き合いたい、またお客様や他店舗で働くスタッフにも共感してもらい大きな取り組みとしてもっともっと広げていきたいと思うようになりました。
また環境問題を難しくとらえるのではなく楽しく知ってもらいたいという思いから、楽しい場面や誰かと一緒に飲めるビールという商品作りを行うことを決めました。

坂本:上勝町を知ったのは、社内のスタッフから環境問題に力を入れている町として話を聞き、実際に視察に行ったのがキッカケです。人口1600人に満たず高齢化率約50%と過疎化が進む四国一小さな町ですが、環境問題への取り組みを知って訪れる人も多く自然にも囲まれたとても魅力のある町でした。


写真:RISE & WIN Brewing Co. BBQ & General Store

2003年に国内初の「ゼロ・ウェイスト宣言」を発表し、2020年までにごみをゼロにする目標を掲げ、ゴミ分別項目は日本最多の45項目に分かれ、各自がゴミを分別し、町内に唯一のゴミステーションに運ぶ活動などを行うことで、ゴミのリサイクル率は約80%を誇っているそうです。
ゴミではなくリサイクル品を集めるという意識が根付いているこの町では、環境問題という課題をどう解決するのか一人一人が考えながら暮らしています。街の魅力とそこで暮らす人の魅力に自分の意識もより高まり、また彼らの姿勢にこれからSoup Stock Tokyoが目指すべき活動と通ずる部分があると感じ取り組みをさせていただきたいとお願いをしました。


写真:RISE & WIN Brewing Co. BBQ & General Store

坂本:ビール造りに必要な原料は麦芽・ホップ・水で製造工程も基本的には同じですが、ラガー、エール、IPAなど、よく耳にするビールの違いを含め実は100種類以上のビアスタイルがあると言われています。
開発に至るまで100本以上のビールを飲み比べ、その中でベースのスタイルを3つに絞り、茶葉と檸檬の皮を実際に入れて飲み比べることで商品のイメージを膨らませていきました。中でもベルギー発祥で独自の伝統製法で作られるホワイトエールは小麦の甘みと弱い酸味の絶妙なハーモニーがSoup Stock Tokyoのスープやカレーと一緒に楽しんでいただいても邪魔をしない、そして多くの方にとって親しみやすい味わいであることから今回ホワイトエールを作ることに決めました。

皆さんは「ホワイトエール」と聞くと、どんなビールを思い浮かべるでしょうか。
その特徴は何と言っても白濁した見た目で、ベルギーの言葉で「白」という意味がある「ヴィットビア」、「ベルジャンヴィット」とも呼ばれることもあるそうです。
白く濁ったビールは、ビールの元になる麦汁に小麦由来のたんぱく質(=グルテン)が多く含まれているためできるのですが、特にホワイトエールは原材料の半分近くが小麦を使っているので他に比べて泡持ちがよく、まろやかな口当たりで、ヨーグルトに似た酸味があります。
坂本:今回作ったクラフトビールは、店舗で調理後に残る茶葉と檸檬の皮を1ヵ月分冷凍保存し、8店舗分の材料を集めて約900本のビールに生まれ変わりました。ビールの元となる麦芽と混ぜ合わせ発酵から熟成、瓶詰と、約1ヵ月半の製造工程を経てようやく商品として皆様にお届けいたします。

肝心の風味の設計については、お店で収集した茶葉のチャイの風味がほんのりと残り、茶葉に含まれるスパイスの香りと檸檬の皮も感じられるさわやかな味わいにこだわり、ビール作りの工程の中でも味や香りを決定づける「煮沸」のタイミングで茶葉と檸檬の皮を投入することで、雑味を消し、豊かな香りが楽しめる味わいとなっています。

坂本:今回は商品ラベルにもこだわって作りました。上勝町の自然豊かな風景の様子と麓にはSoup Stock Tokyoの店舗があり丘の上にはビールを製造していただいた工場をイラストで表しました。お店から生まれた食品廃棄物が新しい商品に生まれ変わったように循環している様子を表現しています。このビールをきっかけにさまざまなところで環境配慮や食品ロス(フードロス)といった取り組みが進められていることを知っていただいたり、Soup Stock Tokyoとともにおいしく・たのしく「もったいない」をなくす活動にご協力いただければと思います!