Soup Stock Tokyo

Soup Friends Vol.45
ウィスット・ポンニミット さん

愛らしいキャラクターの「マムアン」ちゃんがさまざまなストーリーで描かれるシリーズをはじめ、漫画家、映像作家、ミュージシャンなどさまざまな顔を持つウィスット・ポンニミットさんはタイ・バンコク生まれの漫画家。愛称はタム君と、日本人にも親しまれている。彼の描く作品はどこかに切なさが浮かぶシンプルなものが多く、人や動物や自然を心から愛しているのだと想像する、心動かされるものも数多い。どんな経緯でこれらが生まれてきたのか、海を越えて、私たちに届くメッセージがあるのはなぜなのか?お話をうかがいました。

甘いタイ料理?

──Soup Stock Tokyoはご存知ですか?

はい、行った事があります。ベジタリアンスープだったので、ミネストローネだったと思います。

──思い出のメニュー、タイ料理について教えてください。

家で作るんだったらグリーンカレーですね。トムヤムクンは魚介類も複雑に入っているし、作るのはなかなか大変なので食べる場合は外食です。グリーンカレーはヘルシーに作ることができるんです。ココナッツとか野菜とかたくさん入れて。作ってから2〜3日どんどん味が馴染んで、何度も食べられるところも気に入っています。昔、母に作ってもらったのは「モーワンMAUBAN(甘い豚)」という料理でした。タイの南の地方出身だった母は小さいころ、育てた豚を殺してこの料理を作ったと言っていました暑い地方なのに、電気も冷蔵庫もなかったため、とても甘く調理しているようでした。ほとんどのタイ料理が辛いけれど、これはご飯にも合う甘くておいしい料理です。

作品を描くときの気持ち

──依頼されて描く仕事と、自分の作品の違いはどんなところでしょうか。

頼まれたお仕事の場合は、自分が大きくなると思います。「自分」て、とてもちっちゃいんです。これしか好きじゃない、これしかやりたくないと決めつけてしまう自分がいる。けれど頼まれたことが、例えそんなに興味ないことや、書きたくもないことでも、やってみると「これいいね」と思えたり、自然とこだわらなくなる。そうやって嫌な事が減る。最初はこれが嫌だと思ったものが、乗り越えると嫌じゃなくなるんです。なぜちっちゃい自分がいるのかというと、勝手に自ら「自分」を決めつけてしまうからなんです。僕はこれが好きなはずじゃない、とかこれはやるべきじゃない、とかね。本当はもっと自由でいいんです。

──伝えたいメッセージは「愛」なのかな?と作品をみて感じるのですが。

「愛」や「コミュニケーション」みたいなもの、浮かんでくる事がそればっかりなので、それを書くしか無いんです。例えば「何でもいい」って頼まれたら、いま思い出すことを形にするんですが、愛の事とか動物のこと。そんなに難しくないことです。難しいことを描くと、作るの大変だし(笑)大変なことをわざわざやらなくていいと思う。シンプルなことでも簡単なやり方もあるんじゃない?と思っています。ただの漫画だし、ただの僕だし、地球を救おうとか、科学的な問題などエライ事を掲げる必要はないと思っています。自分自身から出てくることを、なるべく簡単に表現しています。

日本とタイの人々の反応の違い

──共感する人が日本に多い理由はなんでしょうか?

日本人とタイ人、僕の作品の好きなところはちょっと違うかもしれないですね。日本人は日常的にたくさんの人と過ごしますよね。人間・人間・人間に囲まれている。人間も自然ですから日本の自然って人間なんだと思うんです、人間の森。その環境で生きるために、生き方を習うんですね。人間について学ぶんです。人が何を考えているのかに興味があるんです。喋り方、髪型、どうすればうまく生きていけるか考えていくと、思考が細かくなっていく。部屋の隅々が見えてくる。扉のハンドルや傘の柄も。だから僕の漫画も凄く細かく、僕自身考えていなかったような凄くデリケートな視点で読んでくれます。僕の作品は何にでもなれる種みたいなものなんでしょうね、シンプルだから見る人の視点で読めるんです。一方タイの人は、自分がやりたいことをやる。会社のためになんて思いません、楽しくなければすぐに切り替えますし、良い意味で自分本位。だから僕の作品も違う視点で見ていると思います。「かわいい」も異なるかわいさですね、色がはっきりしているほうが好みだし、言葉やメッセージがストレートなほうがいいんです。タイ人は愛情の表現もストレートですよ「愛してます」「毎日会いたいです」と表現します。日本人の気持の振れ幅とタイ人のその幅は違うと思います。けれどどちらがいいか悪いということではありません。

──タムさんにとっての原動力は?

依頼があって書く場合は異なりますが、それまではこう思って書いていました。こういう事があって欲しい。こういう人間がいてほしい。こういう会話があってほしい。こういう会話をしている人たちの顔がみたい。こういう問題に対して、こういう解決がされる世界を見てみたい。本当はやりたいのに恥ずかしくてなかなかできない些細なこと。自分の中の希望のようなもの。そういうものを、書いているんだと思います。

ウィスット・ポンニミット

1976年、タイ、バンコク生まれ。愛称はタム。98年バンコクでマンガ家としてデビュー。2003年、神戸に留学。2006年まで日本に滞在。マンガ代表作『ブランコ』『ヒーシーイット』『マムアン』。2009年「ヒーシーイットアクア」が文化庁メディア芸術祭マンガ部門奨励賞受賞。アニメーション作品にSAKEROCKや透明雑誌のPVなど。ミュージシャンとしても活動しており、細野晴臣、阿部海太郎、星野源などと共演。2013年、原田郁子と共にCD「Baan」を発表。現在バンコク在住。

www.wisutponnimit.com

温野菜とチーズのブラウンシチュー

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